ペルテス病 (Perthes 病)   

 

★ はじめに
[定義 概念] 小児期において大腿骨頭への血流が障害され生じた壊死性疾患。

3歳から12歳までに多く、5~8歳の男子が最も罹患しやすい(男女比 約 5:1)

成人の大腿骨頭壊死と異なり骨頭の修復と再生を認めるので、早く見つけてうまく治療すれば成績は高まる。一般に発症年齢が高くなると成績が低下する。

 

★ 代表的症状・検査所見

[症状] 徐々に増悪する歩行時痛による跛行が主な症状で、膝や大腿部に疼痛を訴えることが多い。

股関節に動きの制限 (特に屈曲内転や内旋:下図) 、大腿四頭筋の 廃用性萎縮=無意識に使うことが少なくなって痛い方の太ももが細くなる。



 股関節を他動的に動かすと痛みのために反対側に比べて動きが制限される(可動域が減少する)

[検査所見] 単純X線像:最初は骨頭が外側に偏位し、次第に骨頭の高さが少なくなる(下図 左)。その次に骨頭が画像上白くなり(骨硬化像)、ひび割れのような骨折線が骨頭の輪郭に沿って認められることがある(軟骨下骨折 下図 右)その後画像上黒く見える部分の割合が骨頭で増えていき(透亮像)、体重のかかる骨頭の中央部(荷重部)を中心に変形(扁平化)が進んでいく。


MRI
:早期診断に有用。T1T2強調像で低信号を示し、血流障害=阻血を示す。


 病気の初期は1.骨頭が外側へシフトし、骨盤との重なりが少なくなる。その後 2.骨頭の高さが少し低くなる。 続いて、骨頭が白っぽくなり(骨硬化)、 側面のレントゲンで骨頭の輪郭に沿って地割れのような「軟骨下骨折」を認めることがある。ここまでくればほぼペルテス病の診断で確定します。



 8歳男子 左ペルテス病 初期は左の骨頭の位置がやや外側にある(↑)のと、骨頭が軽度変形している(↓)。
 発症後次第に骨頭が白くなり(壊死期)、壊死骨が吸収されていき黒い部分が混じってくる(分節期)。


 
 おおよその修復までには2~3年を要する。15歳以上になって成人の骨に近い状態となった時、どの程度骨頭が丸いか(球面性が良いか不良か)で後に関節が 痛くなるかならないかが決まることが多い。

 

★ 診断上の注意点

本症では診断がしばしば遅れることがある。以下の点に留意する。

1. 10歳以下で跛行が主訴であれば常に本疾患を鑑別対象として考える。

2. 疼痛部位が股関節以外(大腿や膝)でも股関節の動き(可動域)を調べる。また、大腿の周囲径を測定して、下肢が細くなっていないか=ある程度病気の期間が経過していることを示す を調べる。これらは角度・長さという測定値で明示されるので有用である。

3. 単純X線撮影は必ず左右(両側)、2方向で撮る(軟骨下骨折は側面像でのみ見えることも多い)。
4. 診断や判断に迷うときは
MRIを撮影する。

 

★ 治療の考え方 

骨頭の圧潰(潰れ)を防ぎ、骨頭の球面性を再獲得することにより変形=2次性股関節症の発生を予防することを目標とする。

 

☆ 治療上の一般的注意

股関節の可動域(特に外転)が不良である場合に、骨頭の被覆を目的として無理な装具装着や手術療法を行うと過剰な力が骨頭に及び、圧潰を生じる。

治療に際してはまず拘縮の除去および可動域の維持が重要。

 

☆ 重症度分類と治療  以下はやや難しい内容となります。興味のある方のみお読みください

# まず壊死の範囲により以下 軽度(グループ1)・中等度(グループ2)・重度(グループ 3,4) と分類する=キャタレル分類



 グループ1は通常治療は要らないことが多い。グループ2は年齢によっては要治療となり、グループ3,4の5歳以上では積極的な治療を要する。

 
 # 最近ではこれに骨頭の潰れ方の程度で分類を行い、治療の要否を決めることが多い。Lateral Pillar = 外側の支柱 の高さによる分類



 グループAは治療は要らないこともある。グループB,Cは年齢によっては要治療となり、年長児(>8.0歳)でグループCはよい成績になりにくい。
 一般に A>B>Cで成績がよい。

[軽度]

5歳未満:股関節の動き=可動域が良好であれば、外来での経過観察を行う。可動域が低下すれば入院の上牽引療法と理学療法により可動域を改善させる。

5歳台発症でLateral Pillar 分類 (上図) グループ B,Cであれば骨頭の被覆を得るための骨盤の受け皿=臼蓋による包み込み治療 (containment治療 =下図)を要する。

[中等度]

5歳以上グループ B,Cでは積極的にcontainment治療を行う。

8歳以上の発症例では通常のcontainment治療がうまくいかないこともあり、手術療法もしくは厳格な保存療法(A castなど)を要する場合がある。



 
 装具による骨頭の被覆を得るための包み込み治療=containment治療
  図左  最も一般的な装具であるが効果もある程度限定的である
  図中央 厳格な装具療法の代表である A-cast 外転(Abduction) または見た目が A なのでそのように呼ばれる。成績は良好。
  図右  SPOC装具は片側のみの装具で、患者さんの活動性をある程度維持できることが長所である。

[重度]

5歳以上では厳格な保存療法もしくは手術療法を要する。

近年8歳以上の重症例では治療成績の観点から手術療法(ソルター手術、大腿骨内反骨切り術など 下図左) が好まれる傾向にある。

 

☆ 年長発症例の治療

10歳以上の年長発症例に対する装具療法や内反骨切り術、ソルター骨盤骨切り術の単独施行では成績不良となる確率が高く、両者の同時併用手術やトリプルオステオトミー(下図右) などが選択される。

成人の骨頭壊死に近い病態を示す症例では、杉岡式回転骨切り術なども考慮される。



 手術による containment治療。大腿骨を内側に向きを変える=大腿骨内反骨切り、骨盤骨切り=ソルター手術が代表的である。
 年齢が10歳を超えるとソルター手術では十分に被覆が行えないため、3か所で骨盤を骨切りするトリプルオステオトミーなどが行われる




 大腿骨内反骨切り後のバイパス効果 
 6歳男子 装具治療がうまく行えず紹介受診。 大腿骨内反骨切り後、骨切り効果で血流が増加されるため、骨頭の修復再生が進んだ。 
 術後4年で骨頭は良好な球面となっている。  これは手術治療の利点でもある。

☆ 合併症への対応

初期治療後に骨頭が大きくなってしまう=巨大骨頭や、頸部の成長障害⇒頚部短縮によって生じる大転子高位と呼ばれる変形や脚長差・脚長不等などを生じることがある。

許容範囲を超える場合、巨大骨頭に伴う相対的な臼蓋形成不全には寛骨臼移動術(トリプルオステオトミーなど)、大転子高位には大転子の位置を変更する=下降術、および2.5cm以上の脚長差・脚長不等に対しては健側下肢の成長を抑制する成長軟骨抑制術 (8-plate) などで対応する。

 

☆ 長期成績・予後

長期成績は骨成熟期以降の球面性に相関する。即ち、治療を通して、特に最初の1年間、いかに骨頭が潰れないようにするかが重要である。そして、最終的にいかに骨頭を球面に近い状態するかがペルテス病の治療の本質である。

 

文献・参考資料

[文献] 

1) Catterall A.  The natural history of Perthes disease.  J Bone Joint Surg [Br]  63-B: 37-53. 1971.

2) Herring JA et al. The lateral pillar classification of Legg-Calve-Perthes’ disease.  J Pediatr Orthop 12: 143-50. 1992.

3) Stulberg SD et al.  The natural history of Legg-Calve-Perthes disease.  J Bone Joint Surg [Am] 63-A: 1095-108.1981.

4) 田村 清ほか: 年長児Perthes病の治療,別冊整形外科,32:63-68. 1997.